
BaloiseのIT変革:成長に向けた戦略的転換
ポーランド最大手であり、かつては独占的地位を築いていたPZUは、長年にわたり紙ベースの手続きと官僚的な運営体制に依存し、顧客サービスは後回しという状態で事業を展開していました。競争環境も限定的で、変革の必要性は見過ごされてきました。
しかし、2008年には市場シェアがかつての圧倒的な水準から40%にまで縮小し、Talanx、ERGO、Allianz、AXAといったグローバル保険グループの参入により、競争環境が一変しました。社内にはP&Cと生命保険の2つの主要部門が存在し、それぞれがレガシーシステムに依存しながら独立して運営されていました。
こうした状況を打破し、市場リーダーとしての地位を守るため、PZUは抜本的な構造改革に着手。強力なリーダーシップ、明確な戦略、そして大規模変革を実行できる体制の構築が不可欠でした。 上場を果たしたPZUは、業務効率化を進め、2008年の11.6%から2015年には6.5%まで管理コストを削減。この成果の裏には、紙ベースのプロセスを徹底的にデジタル化した取り組みがあります。
この変革の中心となったのが、PZU史上最大の構造改革プロジェクト「Project Everest」です。これは単なるITシステムの入れ替えではなく、保険会社としてのビジネスの在り方を根本から再構築する挑戦でした。
従来は、保険料率の変更に数ヶ月と多額のコストを要し、財務報告には100以上のサブ台帳を横断して数週間を要するなど、非効率が課題でした。顧客数の把握ですら、部門間で数日かけて確認が必要でした。
そのような中、プロジェクト開始からわずか1年で、新たなコアシステム上での自動車保険商品の初契約が、主要代理店チャネルを通じて実現。さらに4年以内に、損害保険事業全体および全チャネル(専属代理店、マルチエージェント、支店、ブローカー、外部パートナー、ダイレクト)を対象とした変革を、予定通りかつ予算内で完了しました。
これは単なるIT刷新にとどまらず、PZUの業務運営全体を見直し、市場の急速な変化に対応するための柔軟な基盤を築くものでした。 私たちは、この大規模な変革プロジェクトにパートナーとして参画できたことを誇りに思っています。
システム統合、業務プロセスの再設計、アジャイル手法の知見を活かし、PZUがこの大胆な挑戦を成功に導く上で、重要な役割を果たしました。