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CEO Voices – インタビュー:サイモン・ウィルソン氏、Markel保険会社 CEO 「人々は、自らの力が発揮できる組織で働きたいと思っています」
8月 07, 2025 CEO Voices , Interview , AI




「人々は、自らの力が発揮できる組織で働きたいと思っています」

サイモン・ウィルソン氏

サイモン・ウィルソン氏は2025年3月、Markel保険会社のCEOに就任。
2010年にMarkelへ入社し、それ以前はLloyd’sで7年間勤務。
入社後は保険グループの国際事業開発を牽引し、欧州、カナダ、アジアにおけるMarkelインターナショナルの事業拡大を推進しました。

サイモン・ウィルソン氏は、市場ごとに異なる文化的価値観やリスクプロファイルを認識しつつも、保険業における成功の鍵は一貫して「顧客ニーズを理解し、それを超える価値を提供すること」と語り、CEOとしてMarkel保険会社の業務プロセスの簡素化を目指しています。
2020年1月にはMarkelのグローバル戦略担当マネージング・エグゼクティブに就任し、2021年にはMarkelインターナショナルのプレジデントにも就任。
Lloyd's在籍時にはシンガポールにおけるアジアプラットフォームの責任者を務めました。

logo markel

Markelについて

米国に本社を置くMarkelグループは、多様な企業群から構成される企業体であり、主力事業である保険部門では、スペシャルティ保険、再保険、保険リンク証券(Nephila)、ポートフォリオ保護(State National)などを展開しています。

 

保険事業の中核は米国市場にありますが、ヨーロッパ8カ国、アジア6カ国にも拠点を構え、国際的なプレゼンスを拡大。
市場における上位25%の企業を目指し、「業務の簡素化」と「分権化」を戦略の柱としています。

要約

AIの保険業界への影響については、まだ発展途上にあるとサイモン・ウィルソン氏は述べていますが、現在進行中の多くの小規模プロジェクトが今後、大きな変革をもたらすと期待しています。 リスク評価と定量化は大きく進化しており、伝統的な海上保険においても、データと分析が引受判断を支援する重要な要素になっています。 「我々が従業員に裁量を与えてきた結果、現場の様々な部門から革新的なソリューションが生まれてきています」とサイモン・ウィルソン氏は強調しています。

ソラーズ・コンサルティング社 CEO ミハウ・トロヒムチュクによるインタビュー

 

ミハウ・トロヒムチュク:この25年間で、保険業界にとって最も重要な技術革新は何だと思いますか? それはMarkelにどのような影響を与えましたか?

サイモン・ウィルソン氏:この四半世紀で最も大きな変革は、リスクの定量化と評価方法です。
アクチュアリーによる価格設定手法やポートフォリオ管理、自然災害モデル、IoTを含む新たなデータソースなど、引受人が活用できるツールは格段に高度化しました。
結果として、より迅速かつ的確な意思決定が可能になっています。
一例として、従来は非常に保守的だった海上保険分野では、今では船舶の航行情報をリアルタイムで取得し、引受判断を支える高度な分析が行われています。

ミハウ・トロヒムチュク:現在、世界はさまざまな地政学的・経済的・環境的な課題に直面しています。Markelとして、最も注目しているリスクと、その対応策について教えてください。

サイモン・ウィルソン氏:私たちは、リスクが多様化する現代において、お客様がそれに対応できるような新しいソリューションを提供する責任があります。
現時点では、経済リスクが最も喫緊の課題だと考えていますが、それ以外の分野でもリスク対応策を講じています。
例えば、地政学的リスクに対しては海上戦争保険、経済的不確実性に対しては貿易信用保険や保証保険、環境分野では再生可能エネルギー関連の引受や、蓄電池関連の新商品開発などを推進中です。

 

最後に、私たちが特に期待しているのは、より高度な分析が可能になることです。

ミハウ・トロヒムチュク:今後25年で、保険業界に最も大きな影響を与える変化は何でしょうか? また、Markelにとってそれはどのような意味を持ちますか?AI、IoT、量子コンピュータといった技術革新は、今後どのような役割を果たしていくとお考えでしょうか?

サイモン・ウィルソン氏:AIの影響については、まだ初期段階ではありますが、Markelでは早い段階から積極的に取り組んできました。
たとえば、全社員にMicrosoft 365 Co-pilotを導入した初の保険会社であり、60%以上の社員が実際に活用しています。
本当の価値は、生産性向上だけでなく、従業員がAIに慣れ、業務にどう応用できるかを自ら考えるようになることです。
テクノロジーの理解と、各チームが持つ業務知識が結びついてこそ、大きな変革につながると考えています。
現場主導でイノベーションが生まれており、例えば英国リーズの新入社員が引受ガイドライン用のチャットボットを開発したり、カナダ・トロントの学生が引受仕分けモデルを構築するなど、多様な動きが出ています。
特定の「技術革新」ではなく、多くの社員が自分の課題にテクノロジーを適用していくことで、今後の業界は大きく進化すると見ています。

 

ミハウ・トロヒムチュク:現在導入中のGuidewire ClaimCenterによって、Markelはどのようなビジネス目標の達成を目指していますか? また、業務効率や戦略的な目的への寄与についてもお聞かせください。

 

サイモン・ウィルソン氏:当社の損害対応サービスには誇りを持っており、数々の賞もいただいています。

今後さらなる成長を目指す中で、損害担当者が優れたツールとデータを持つことは非常に重要です。

現在は複数のシステムを併用しており、ClaimCenterを導入することで、統一された損害処理プラットフォームを実現し、業務効率の向上と意思決定の質の向上を目指しています。

特に、アジア太平洋地域などロンドン市場のECF2[1]の恩恵を受けていない地域では、この統合プラットフォームが不可欠です。

さらに、分析機能の高度化にも大きな期待を寄せています。

引受部門ではすでに高度な分析の効果を実感しており、今後は損害部門でも同様の進化を遂げたいと考えています。

 

ミハウ・トロヒムチュク:CEOとしてのリーダーシップのスタイルと、それを組織全体に浸透させるための考え方を教えてください。

サイモン・ウィルソン氏:私のリーダーシップの基本方針は「優秀な人材を見つけ、彼らに裁量を与え、そして成果に責任を持ってもらう」ことです。

私は国や地域を問わず、誰もが自らの能力が信頼されていると実感できる組織で働きたいと考えていると共通して響く考え方だと考えています。

 

 

[1] The Electronic Claims File (ECF2)とは、ロイズ市場の保険会社が1つの中央管理システム上で、電子的に保険金請求の確認や対応を行えるようにする仕組みのこと

 

 

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